『政治学のリサーチ・メソッド』(スティーブン・ヴァン・エヴェラ)

『政治学のリサーチ・メソッド』(スティーブン・ヴァン・エヴェラ)
 
表題の通り、政治学の研究をするにあたってのメソッドがまとめられている。
政治学に限らず、特に社会科学系の研究にあたっては非常に参考になる良書であると思う。
 
 
【仮説・法則・論理】
 
まず重要なのは政治学においても最も重要なのは「因果関係」であることをしっかりと頭においておくことである。
A→Bであることである。そして、研究において必要なのはA⇔Bでないこと、A→C→B等でないことをしっかりと示すことである。(真実がA→Bのとき)
 
理論:因果法則あるいは因果関係を示す仮説。
 
よい理論:①事象を説明する力が高いー重要性・説明範囲・現実への適用可能性の高さ
②簡潔 ③好奇心を充たすもの ④明確に組み立てられたもの ⑤反証可能 ⑥重要な事象を説明
⑦現実への処方に富む。
 
よい理論を生み出すには:①「outlier」事例を考える ②「差異法」=全体的な特徴は似ているが、研究変数のみが異なっている事例を調査
③研究変数の値が極端に高いか低い事例を選ぶ ④反実仮想分析=もし〜がおこっていないかったらどうなっていただろうか。等
⑤他分野からの援用  等
 
 
【理論検証】
理論検証の方法は基本的に2つ、実験と観察による。しかし社会科学においては、実験を実際に行うのは非常に困難であることから、
ほとんどの場合、観察による検証を行う。そして、観察における検証も2パターンある。
統計分析を行う定量的な多数事例研究(large-n)と少数の事例を精査する定性的な事例研究(case-study)である。
 
事例研究はかく乱を起こす第3の変数の影響を制御する機会が最も少ないと主張する学者もいる。
確かにその側面はあるが、①似た背景にある複数の事例を観察する(実質的には困難)、あるいは②研究変数の値が極端な研究事例を選択することでそれらは調整することができる。
 
 
また事例研究は因果関係の経路をより細かく指し示してくれるという効果もある。
例えば、ある教育プログラムの実施が大学進学率を上げたとすると、具体的にどのように先生は教え、
子供のどの部分の成績が上がり、その他生活態度に変化はあったかなどは事例研究による細部調査によって分かることである。
すなわち、計量分析における「ブラックボックス」を明らかにする作用を持つ。
 
 
【博士論文の7体系】
1.理論提唱型
2.理論検証型(1と2はしばしば同時になされる)
3.先行研究評価型
4.政策評価型
5.歴史説明型
6.歴史評価型(事実に語らせる歴史学はこれを評価しない。しかしそれは目的の違いにある。歴史学は「歴史の真実を明らかにすること」
一方、政治学は「現在や未来の問題の解決策を過去から学ぶこと」も目的に含むのである。)
7.予測型
 
【博士論文 テーマの見つけ方】
・「誰かが書くべき本や論文」リストを作成する。
・授業の科目終了後、その科目の授業で取り扱ったトピックにおいて何が欠けていたかをメモ