『ヨーロッパ思想入門』(岩田靖夫)

『ヨーロッパ思想入門』(岩田靖夫)

ブリーフィング
岩波ジュニア文庫ではあるものの、ヨーロッパ思想の根源を知れる良書。
構成として、前半部においてヨーロッパ思想の根源をなすヘレニズムおよびヘブライズムに関する著述が続き、後半部では様々なテーマのもと、各思想家の思想をまとめている。

以下、前半部のヘレニズムとヘブライズムに関してまとめる。

ヘレニズム:
ヘレニズムはアテネを中心としたギリシア半島で栄えた思想である。
その中心概念は”本質へのまなざし”にあるのではないか、と考えられる。
物事の本質、我々人間の本質は果たして何であるか、それが彼らの根本的な問いであった。
これは西洋における数学や哲学の発達に寄与していると考えられる。
そして、その他現在の大きな影響を与えているのは法の下での自由と平等である。同時代のほとんど全ての共同体が国王を中心にした、圧政の下にあったことを考えれば、この国の異様さが際立つと言えるだろう。

そんな彼らにとって、最高の人生とは何か。それは自己の全能力を発揮することにある。

また彼らにとっての「神」は人間の延長、人間の理想=不死としての存在である。従って、神は不倫もするし、恋愛もある。そこには超越性がないのである。


ヘブライズム:
ヘブライズムとは旧約聖書、ユダヤに端を発する。
彼らの思想の根本にあるのは、神、超越的な神、無から有を作り出す神。愛の神である。
そして、その神の下、人間は完全に平等である。神の絶対性の下では、現世の地位による差異などないに等しい。これが世界宗教として、多くの者を惹き付けてやまない理由であろう。来世の仮場としての現世において、人は一人一人が比較を許さない絶対者であり、農民も商人も王も等しいのである。